その花は、人肌の
透き通った柔らかいぬくもりと
通り過ぎた人々の涙で育った。
僕という人間は、自分の価値に見合わず 良く 愛された。
思うにそれは、綿菓子のようなもの。
すごく曖昧な、とても甘い、霧のようなものが
そこに溢れていて
僕はそれを 心に絡めとっていくのだ。
幾数人、幾数十人、幾数百人の
心が放つ、甘美な、愛の濃霧を。
そうして、あたりに漂っていたモノは
徐々に形を成す。
僕という名の、黒藍の禍々しい花へ。
少し影のあるそのいびつな花は
それをこよなく愛し、育ててくれた人たちの手によって
毒々しいほどに甘く、
その花弁はくちびるを溶かした。
スウィート・キング
熱く、液状のまま形を留めるその花に。
僕がつけた名前。
「愛された記憶だけで生きていくことはできないが、愛されたことが無ければ生きてゆけない。もちろん。誰かを愛する・ことも」
だから生まれたばかりの子供の仕事はは、まず、生きてゆくために愛されること。
ぼくはつい最近まで子供だったことに、最近、気づいた。